2026/09/23
先日、「息が苦しい」という症状で来院された患者さんがいらっしゃいました。心電図検査で心室期外収縮(不整脈の一種)が見つかったため、続けて心エコー検査を行ったところ、「拡張型心筋症」と診断されました。

息切れや疲れやすさは「年齢のせい」「疲れているだけ」と思われがちですが、その陰に心臓の病気が隠れていることがあります。今回は、この拡張型心筋症について詳しくご紹介します。
拡張型心筋症とは
拡張型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が薄く引き伸ばされ、心臓の部屋(特に左心室)が大きく広がってしまう病気です。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしていますが、心筋が伸びて弱くなることで、ポンプとしての力(収縮力)が低下します。
その結果、全身に十分な血液を送れなくなり、「心不全」の状態に進むことがあります。
こんな症状はありませんか?
初期には自覚症状がほとんどないことも多く、進行とともに次のような症状が現れます。
• 階段や坂道で以前より息が切れる
• 動悸がする、脈が飛ぶ感じがある
• 足や顔がむくむ
• 短期間で体重が増えた(体に水分がたまるため)
• 疲れやすい、体がだるい
• 夜、横になると息苦しく、体を起こすと楽になる
特に最後の「横になると苦しい」という症状は、心不全が進んでいるサインの可能性があります。早めの受診をおすすめします。
主な原因
多くは原因がはっきりしない「特発性」ですが、次のようなものが関わることがわかっています。
• 遺伝的な要因(ご家族に同じ病気の方がいる場合があります)
• ウイルス感染による心筋炎の後
• 長期間の多量飲酒
• 一部の抗がん剤などの薬剤
• 出産前後の時期に発症するもの
ご家族に心筋症や若くして突然亡くなった方がいる場合は、診察の際にお知らせください。
注意したい合併症
拡張型心筋症では、次のような合併症に注意が必要です。
心不全:心臓のポンプ機能が低下し、息切れやむくみが悪化します。
不整脈:心室性の不整脈が起こりやすく、重いものでは突然死の原因となることがあります。
血栓症:心臓の中で血の流れが滞り、血の塊(血栓)ができて脳梗塞などを起こすことがあります。
これらを防ぐためにも、早期の診断と継続した治療がとても大切です。
検査・診断
<心電図検査>
不整脈や心臓への負担の有無を確認します。今回の患者さんのように、心電図の変化が発見のきっかけになることも少なくありません。
<心エコー(心臓超音波)検査>
診断の決め手となる検査です。心臓の大きさ、壁の厚さ、動き(収縮力)をリアルタイムで確認できます。体にゼリーを塗って超音波を当てるだけなので、痛みや被ばくはありません。
<胸部X線検査・血液検査>
心臓の拡大や肺への水分のたまり具合を確認します。血液検査では、心臓への負担を反映する「BNP」という数値を調べます。
さらに詳しい検査(心臓MRI、心臓カテーテル検査など)が必要な場合は、連携する専門医療機関をご紹介します。
治療について
お薬による治療
心臓の負担を減らし、病気の進行を抑えるお薬が治療の中心です。近年は心不全のお薬の選択肢が大きく増え、複数のお薬を組み合わせることで、症状の改善や経過の改善が期待できるようになっています。むくみが強い場合は、体の余分な水分を出す利尿薬も使います。
専門的な治療
重い不整脈がある場合や心臓の動きのずれが大きい場合には、植込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)などの機器による治療を検討します。さらに重症の場合には、補助人工心臓や心臓移植が検討されることもあります。これらは専門病院と連携して進めます。
